刀ss

 

一口に付喪神、刀剣男士と言っても、彼らにも様々なものがいる。見た目の幼いもの、年嵩なもの、体の大きいもの、小さいもの、気位の高いもの、気さくなもの。顕現させるにしたって、ひとの懐に常に控えていたその性質からか、短刀らはこちらの声によく応え姿を見せてくれるが、なかなか声も届かず、限られた供物や場所で呼んでようやく応えてくれるというものもいる。
呼ばれて素直にひとに力を貸してくれる刀たちは優しい方だ。神ぐらしが長いものにはあまり人の子の争いに興味がなかったり、争い自体を嫌ったりするものもいる。彼らも心を持ちこの日の本にいきづく命なのであるからして、それは仕方のないことである。
政府が審神者の務めを始めるにあたって、無条件で誰にでも力を貸すと言ってくれた刀が五振りいる。審神者は彼らの中から一振り選び、そこから本丸を築きあげるのだ。現在の付喪神システム構築にあたり、刀剣男士の神々に無条件での顕現をかしこみ奉った際、名乗りを上げた五振りはこう語った。

歴史を改竄しようなどというのは、美を重んじる自分からしたら雅ではない。花は散るから美しいのである。そんな無粋な輩は我こそが手討ちにしてくれよう。と。

自分は、自らの存在に負い目を持ちながらも、それを払拭せんと刃を研ぎすまし続けてきた。それこそが自分は自分であるという歴史の証明であるのに、誰かの都合で無に帰されてしまったらたまったものではない。と。

本物であるという誇りこそを携える自分にとって、この歴史を贋作にせんと企む輩は甚だ許しがたきものである。この誇りある限りそんな真似はさせない。と。

この身はもう折れて夢となってしまったけれども、主に愛され頼られたという事実は消えることはない。その歴史を変えようなどというのなら、いくらでも相手になってやろう。と。

人の子にとっての今も昔も、我が主の守ろうとした未来に他ならぬ。日の本の未来を考え死んでいった主の一番そばに居たというのに、なぜ未来の破壊を見逃せよう。と。

政府はこの五振りを便宜上初期刀と名付け、各本丸の要として迎え入れた。あちこちの本丸で多くの付喪神たちが召喚に応え、男士たちが増えていく中で、この歴史修正主義者との戦争が終結する最後まで活躍した刀もあったという。